DX人材とは?ビジネスをリードするデジタル専門家

DX人材とは

DX人材とは

DX人材とは、デジタル技術やデータ活用に精通した人材であり、また業務内容にも詳しく、デジタル化によって何が可能かを理解し、DXの取り組みを主導して実行する役割を持ちます。

DXの目的は、ビジネス環境の変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズに基づき、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立することです。経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」でもこのように定義されています。

DX推進に取り組む企業が増えている中で、DX人材の存在は不可欠です。彼らはデジタル技術やデータの知識を活かし、組織全体の変革を促進します。具体的には、以下のような役割を果たします。

  1. デジタル技術の導入と活用
    DX人材は最新のデジタル技術を把握し、業務プロセスの改善や効率化のためにそれらを導入します。彼らは新たなツールやシステムの提案を行い、具体的な実行計画を策定します。
  2. データ活用の推進
    DX人材はデータの収集や分析を通じて、ビジネスの課題や顧客のニーズを把握し、意思決定に活かします。彼らはデータ駆動型のアプローチを推進し、事実に基づく意思決定を支援します。
  3. 組織変革のリード
    DX人材は組織やプロセス、企業文化の変革をリードします。彼らは組織全体にDXの理念を浸透させ、変革に向けた戦略的な計画を策定し、関係者との協力を促進します。
  4. プロジェクト管理とチームの指導
    DX人材はDXプロジェクトの管理を行い、関係者との連携を図りながら進行を監督します。彼らはチームの指導とサポートを提供し、目標達成に向けた努力を促進します。

デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、DX人材の存在が不可欠です。彼らはビジネスの競争力を高め、持続的な成長を支援する役割を果たします。

DX人材の不足

DX推進における最大の課題は、DX人材の不足です。現在、DXの重要性を認識している企業が増えている一方で、DXを推進できる人材の数や質に問題があります。

2023年に発表された「DX白書2023」では、日本企業におけるDX人材の不足が指摘されています。調査結果によれば、DXを推進するための人材が「量」と「質」の両面で不足していると回答した企業が増加しています。特に2022年度の調査では、DX人材の不足に対する認識が顕著に高まっています。

この課題の要因として、企業がDXに取り組む割合が増え、それに伴いDX人材への需要が高まっていることが挙げられます。また、日本企業がキャリア形成や学びに関する取り組みが不足していることも影響しています。

このような状況から、DX推進における最優先の課題はDX人材の確保と育成です。企業は人材確保のために、以下のような施策を実施することが求められています。

  1. 外部の専門家の活用
    DX人材の不足を補うために、外部の専門家やコンサルタントを活用することが有効です。彼らは豊富な知識と経験を持ち、企業のDX推進に貢献できます。
  2. 内部のスキルアッププログラム
    現在の従業員に対して、デジタル技術やデータ活用などのスキルアッププログラムを提供することで、DX人材を内部から育成することができます。
  3. 外部の教育機関との連携
    外部の教育機関と協力し、DXに関する研修やプログラムを開催することで、新たなDX人材を育成することができます。
  4. 人材の多様性の尊重
    DX推進には多様な専門知識や視点が必要です。企業は多様なバックグラウンドや経験を持つ人材を積極的に採用し、組織内の多様性を尊重することが重要です。
  5. DX文化の醸成
    DXを推進するための文化を醸成することも重要です。リーダーシップの下で、チームワークやイノベーションを奨励し、DXに対する意識と取り組みを浸透させることが必要です。

以上の施策を実施することにより、企業はDX人材の不足を克服し、効果的なDX推進を実現することができます。

DX人材の7つの職種

IPAによるDXに対応する人材の定義は以下の通りです。

  1. プロダクトマネージャー
    ビジネス戦略と技術の両方を理解し、製品やサービスの開発・改善をリードする役割です。顧客のニーズを把握し、戦略的な方向性を提案します。
  2. ビジネスデザイナー
    ユーザー中心の設計思考を活用して、製品やサービスのデザインを行います。ビジネス目標とユーザーのニーズをバランスさせながら、優れたユーザーエクスペリエンスを提供します。
  3. テックリード
    技術的なリーダーシップを持ち、開発チームを指導し、DXプロジェクトの成功に向けて技術的な課題を解決します。優れたプログラミングスキルとチームマネジメント能力が求められます。
  4. データサイエンティスト
    データ分析と予測モデリングによってビジネス上の洞察を得るためにデータを活用します。データの収集・解析・可視化を行い、意思決定に役立つ情報を提供します。
  5. 先端技術エンジニア
    AI、機械学習、ブロックチェーンなどの先端技術に精通し、それらをビジネスに応用する役割です。新しい技術の研究・開発・導入を行い、イノベーションを推進します。
  6. UI/UXデザイナー
    製品やサービスのユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)の設計を担当します。ユーザーのニーズを理解し、使いやすさや視覚的な魅力を追求します。
  7. エンジニア/プログラマ
    ソフトウェア開発やプログラミングのスキルを持ち、DXプロジェクトの実装やシステム開発を担当します。優れたコーディングスキルと技術的な専門知識が求められます。

これらの職種は、DX推進において重要な役割を果たす人材であり、それぞれの専門知識とスキルが必要とされます。それぞれの職種について具体的に解説していきます。

プロデューサー

プロデューサーは、DXやデジタルビジネスの推進を主導するリーダー的な役割を果たす人材です。彼らはデジタル技術の活用能力だけでなく、組織のビジョンや既存の資産に対する深い理解も必要とされます。そのため、通常は管理職や事業の中核メンバーがプロデューサーとして任命されることが多いです。

プロデューサーには、課題設定の能力が求められます。彼らはビジョンを提案し、実行に移す力を持ち、組織全体に浸透させる役割を果たします。また、組織を横断して事業を推進するために、調整力やマネージメント能力も重要です。

プロデューサーの役割は、DXやデジタルビジネスの成果を最大化し、組織全体の目標達成に貢献することです。彼らは戦略的な視点からビジネスの方向性を提供し、必要なリソースを組織内外から取りまとめてプロジェクトを推進します。

総合的なビジネススキルとリーダーシップ能力を持つプロデューサーは、DXの成功に不可欠な存在と言えます。彼らはビジネスとテクノロジーの融合を促進し、変革をリードする役割を果たします。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DXやデジタルビジネスの計画や立案、推進などを担当する人材です。

彼らはプロデューサーの指示のもと、具体的なビジネスモデルを企画し実行する役割を果たします。そのため、プロデューサーと同様に自社のビジネスに対する深い理解が求められます。

ビジネスデザイナーには、ビジネスと技術に関する知識が必要です。また、新しいビジネスモデルを考えるための創造力や発想力も重要な要素です。彼らはビジネスのニーズや市場の動向を分析し、革新的なアイデアや戦略を提案します。

さらに、ビジネスデザイナーはチームの合意形成や相互理解を促進するためのファシリテーション能力も必要です。関係者間のコミュニケーションを円滑にし、チーム全体の協力を引き出すことが求められます。

ビジネスデザイナーは、ビジネスの視点とデザイン思考を組み合わせ、革新的なソリューションを生み出す役割を果たします。彼らの活躍によって、企業は市場競争において優位性を築き、DXの成功につなげることができます。

テックリード

アーキテクトは、DXやデジタルビジネスに関連するシステムの設計能力を持つ人材のことを指します。

彼らはプロデューサーやビジネスデザイナーが企画したビジネスを実現するために、システムの設計を主導します。これには要件定義や仕様策定など、ソフトウェアエンジニア(SE)の業務も含まれます。しかし、アーキテクトの重要な能力は、ビジネスの課題を深く理解し、ソリューションの提案を行うことです。

アーキテクトは、ビジネスの要件や目標を把握し、それに適したシステムのアーキテクチャを設計します。彼らはビジネス面と技術面のバランスを取りながら、システムの機能、性能、セキュリティ、拡張性などを考慮して最適な設計を行います。

また、アーキテクトはビジネスデザイナーやプロデューサーと緊密に連携しながら、ビジネスの戦略や目標に基づいたシステムの設計を行います。彼らの役割は、ビジネスと技術の両面を統合し、DXやデジタルビジネスの成功に貢献することです。

アーキテクトは、システムの設計やソリューションの提案において重要な役割を果たします。彼らの専門知識と能力によって、企業は効果的なシステムを構築し、ビジネス目標の達成に向けて前進することができます。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、DXやデジタル技術(AI、IoTなど)およびデータ解析に精通した人材を指します。

DXの推進において、AIやIoTなどの関連分野を活用するためには、膨大な量のビッグデータから有用な洞察を引き出す能力が必要です。データサイエンティストは、統計学の知識や経験、プログラミングスキルを活用して、ビッグデータを分析し、意味のある情報や予測モデルを開発します。

データサイエンティストは、データのクリーニング、変換、可視化、統計モデリング、機械学習アルゴリズムの開発など、データ解析のさまざまなタスクに取り組みます。彼らはビジネス上の課題や機会を特定し、データに基づいた意思決定をサポートします。

データサイエンティストの役割は、データ駆動型の意思決定を支援し、ビジネス価値を最大化することです。彼らは企業内部や外部のデータを活用して優れた予測モデルや洞察を提供し、戦略立案や効果的なビジネスプロセスの改善を支援します。

データサイエンティストの需要は高まっており、企業は中途採用を通じてデータサイエンティストの人材を確保することが一般的です。入社後はOJT(On-the-Job Training)などを通じてフォローアップが行われ、実践的なスキルや経験を磨いていきます。

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、DXやデジタル技術において先進的な技術領域に精通した人材を指します。

DXの推進において、新たな技術やトレンドを活用することは重要です。先端技術エンジニアは、最新のテクノロジーに関する知識やスキルを持ち、それらを実際のビジネスシナリオに適用する能力を持っています。

先端技術エンジニアは、例えば人工知能(AI)、機械学習、ブロックチェーン、クラウドコンピューティング、ロボティクス、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)などの分野に詳しい場合があります。彼らは、これらの技術をビジネスに応用するためのソリューションやアプリケーションを設計・開発し、実装します。

先端技術エンジニアは、新しい技術の動向を追い、その有効性やビジネスへの適用方法を評価します。彼らは企業のニーズに合わせて最適な技術戦略を策定し、実装における技術的な課題や制約を克服するためのソリューションを提供します。

先端技術エンジニアは、通常、エンジニアリングのバックグラウンドを持ち、プログラミングやソフトウェア開発のスキルを持っています。さらに、先端技術に関する知識を継続的に学び、新しいトレンドや技術革新に追いつくことが求められます。

彼らの役割は、企業のDX戦略において革新的な技術を活用し、競争力を高めることです。先端技術エンジニアは、組織内の他のメンバーやパートナーと連携し、新しい技術の導入やプロジェクトの推進に取り組みます。

UI/UXデザイナー

UXデザイナーは、ユーザーの視点に立ち、使いやすさや満足度を考慮しながらシステムやアプリケーションのデザインを行います。彼らはユーザーインターフェース(UI)やユーザーエクスペリエンス(UX)の設計、情報アーキテクチャの構築、ユーザーリサーチの実施などを担当します。

UXデザイナーは、ユーザーが直感的に操作できるインタラクティブなデザインを作成し、ユーザーがシステムやアプリケーションを効果的に利用できるようにします。彼らはユーザーのニーズや要件を理解し、その情報を基に洗練されたデザインソリューションを提供します。

また、UXデザイナーはプロトタイプの作成やユーザーテストの実施、フィードバックの収集なども行います。これにより、ユーザーの意見や要望を取り入れながらデザインを改善し、最終的にユーザーにとって魅力的な体験を提供することを目指します。

UXデザイナーはクリエイティブな思考とデザインスキルを持ち合わせていますが、同時にユーザーの視点やニーズを理解し、ビジネス目標とのバランスを取る能力も求められます。彼らの役割は、使いやすく魅力的なデジタル体験を実現し、ユーザーの満足度を高めることにあります。

エンジニア/プログラマ

エンジニアやプログラマーはデジタルシステムの実装や開発を担当する重要な役割を果たしています。

彼らはアーキテクトやビジネスデザイナーが設計した仕様に基づいてプログラミングを行い、ソフトウェアやアプリケーションの開発を進めます。彼らはプログラミング言語やフレームワークに精通しており、要件に応じてコーディングやテストを行い、システムの機能を実現します。

DXの現場では、エンジニアやプログラマーはさまざまなデジタルシステムやツールに精通している必要があります。また、最新の技術やトレンドにも敏感であることが求められます。彼らは柔軟な発想と問題解決能力を持ち、日々進化するテクノロジーに対応しながら効率的かつ高品質なソフトウェアの開発を行います。

エンジニアやプログラマーの役割は、DX推進において非常に重要です。ただし、企業内で必要なスキルやリソースを持つエンジニアを確保することは困難な場合もあります。そのため、外部の専門リソースやパートナー企業との協力を活用することが一般的です。エンジニアやプログラマーは、チーム内の他のメンバーやビジネス目標との連携を図りながら、技術的な専門知識と実装力を活かしてDXの実現に貢献します。

スキルと資格

DXを推進する上で必要なスキルと資格を具体的に解説します。

  1. ITに関する基礎知識
    デジタル技術やIT分野の基礎知識は必須です。ネットワークやシステムの仕組み、ウェブやアプリケーションに関する知識を持つことが重要です。
  2. デジタルトレンドに関する知見
    DXは常に進化するデジタル技術を活用しています。最新の技術やトレンドに敏感であり、自社のビジネスにどのように取り入れるかを模索する能力が求められます。
  3. プロジェクトマネジメント能力
    DX推進は試行錯誤の連続です。変化の多い環境でも自身やチームの業務をマネジメントできる能力が必要です。アジャイル開発や柔軟な調整に対応する能力も重要です。
  4. ビッグデータの活用
    ビッグデータの活用や機械学習の知識はDX推進において重要です。データの分析や予測に基づいた意思決定が求められます。
  5. UX・UI思考
    ユーザーエクスペリエンス(UX)とユーザーインターフェース(UI)の観点を持つことが重要です。ユーザーのニーズや行動を理解し、使いやすいシステムやサービスを設計する能力が求められます。
  6. AIなどの最先端技術の知識
    DXにおいてAIやディープラーニングなどの最先端技術の知識は重要です。企業が新たな価値を生み出すためにこれらの技術を活用する能力が求められます。

マインドセット

DX人材に必要なマインドセットとは、以下のような特徴を持つことが重要です。

  1. 課題設定力
    DX推進においては、まず現状のビジネスにおける課題を的確に把握し、解決策を見つける能力が求められます。課題を明確にし、ビジョンと現状を結びつけるために必要な施策を絞り込む力が重要です。
  2. 主体性・好奇心
    DXの実現には、主体的に取り組む姿勢や好奇心が必要です。自ら解決したいという意欲や、デジタルトレンドや自社事業に対する探究心を持つことが重要です。試行錯誤を繰り返しながら成果を出すために、主体性と好奇心は欠かせません。
  3. リーダーシップ
    DXはビジネス全体を変革する大きな取り組みであり、周囲の理解が得られない場面もあります。そのような状況で周囲に働きかけ、ステークホルダーを巻き込みながらリーダーシップを発揮する能力が重要です。DXの推進においては、リーダーシップを取ることで他のメンバーを鼓舞し、共通の目標に向かって進むことが求められます。
  4. 柔軟性・適応力
    DXは常に変化し続けるものであり、柔軟に対応し、環境の変化に適応する能力が求められます。新しいテクノロジーや手法に対して素早く学び、変化に積極的に対応することが重要です。
  5. チームワーク・コラボレーション
    DXの推進は単独ではなく、複数の人々や部門との連携が不可欠です。チームメンバーとの協力や意見交換、情報共有を円滑に行うチームワークやコラボレーション能力が求められます。DXの実現には異なるバックグラウンドやスキルを持つ人々と協力し、共同で目標に向かって取り組むことが重要です。

以上が、DX人材に必要なマインドセットの特徴です。これらの要素を持つことで、DXの推進に貢献できるでしょう。

DX人材を確保するための方法

DX人材を確保するための方法は、採用と育成の2つの手段があります。

DX人材を採用するポイント

  1. 自社に必要な人材要件を明確化することが重要です。自社のDX推進の状況やプロジェクトのニーズに合わせて、どのようなスキルや能力が必要かを明確にしましょう。
  2. マネジメント制度の整備も重要です。DX人材は従来の評価基準には合わない場合があるため、スキル評価や処遇を適切に行うためのマネジメント制度を整えましょう。

DX人材を育成するポイント

  1. OJTの機会創出が効果的です。実践的な能力を育てるためには、DX推進に関する取り組みに実際に携わる機会を提供しましょう。OJTによる実践経験が、DX人材の成長につながります。
  2. スキルトランスファー型の支援を受けることも有効です。外部のベンダー企業から開発やトレーニングの支援を受けることで、実務を通じて人材育成を行うことができます。これにより、自社の課題解決に最適なシステムを開発できる人材を確保することができます。

以上が、DX人材を確保するための採用と育成のポイントです。自社の状況やニーズに合わせて、適切な方法を選択し、有能なDX人材を確保・育成していくことが重要です。

まとめ

  1. DX人材の採用においては、自社の必要な人材要件を明確化し、マネジメント制度を整備することが重要です。
  2. DX人材の育成においては、OJTの機会を創出し、実践的な能力を育てることが効果的です。また、業務・技術を後輩や他の部署に引き継がせる際に、蓄積した技術や知識を与えることをサポートすることが有益です。

特に、蓄積した技術や知識を与えることは、DX人材の育成において重要なカギを握っています。これにより、実践経験を通じて自社の課題解決に適したシステムを開発できる人材を育成することが可能となります。

以上のポイントを踏まえて、自社のニーズや状況に合わせた効果的な採用と育成の手段を選択し、優れたDX人材を確保・育成していくことが重要です。